1990年代初頭バブルが弾けてからというもの日本はデフレに突入し失われた30年間を過ごしてきました。
まるで20XX年の世紀末のようなデフレ経済が眼前に広がり、経済の断末魔が聞こえてくるようです。
そんな日本に過ごしている今、日本の安さに向き合ってみようとこの本を手に取ったわけです。
僕はコスパに魅力を見出している人間だけど、日本はもうすでに”安い”らしい。
コスパ大好き人間の視点から今回この本についての記事を書いてみる事にしました。
この本は著者の方が日本経済新聞や日経電子版に掲載された記事をベースに、当時書ききれなかったことや新しい取材で得た話、読者の疑問点への回答などが書かれています。
日本の購買力の低下
日本は購買力が低下しまっています。
購買力とは商品やサービスを買うことのできる資力のこと。
購買力が低下した流れは以下だからだそうです。
製品の値上げができないと企業が儲からない→企業が儲からないと賃金が上がらない→賃金が上がらないと消費が増えない→物価が上がらない
つまり諸悪の権化は製品の値上げができていないことですね!😧
ただこの製品の値上げに関して僕も思うところがあります。
それはそもそも消費者が欲しい製品を出していないこと。
つまり、消費者が欲しいと思わないものを売り出してもそれは安く売られるわけで、消費者が欲しい製品を作り出せれば多少高くても消費者は買うと思う訳です。
つまり最初の企画の段階で問題があったと考えるべきかと思うのです。
日本の購買力が落ちた根本原因は実質賃金が上がらないことで海外の成長している経済に比べて、日本の家計がどんどん貧しくなっているところにあるとも本書では書かれていました。
その賃金が上がらない理由は労働者の生産性が上がってないからであり、その生産性が上がってない理由は人工知能など21世紀に必要とされるスキルを学生や労働者が取得できる環境を大学も企業も提供していないから。
企業は労働者の専門性を高める人の育て方をしてないし、専門性を高めた労働者の給料をより高くすることもしていないとのことです。その結果「落ちこぼれも出さないが、傑出した人材も出てこない」ことになっているとのことでした。
教育の部分ですね。こちらに関しても僕は思うところがあったりもします。
能力至上主義では日本はまだまだないですよね。
年功序列、終身雇用という病巣となっているものがありますよね。
またこうも書かれています。
日本が安さから脱却するには、若者や低所得者など消費性の高い人々の所得を引き上げることが大事なんだとか。
若者は分かりますが、低所得者って消費性が高いんでしょうか。すこし気になるところですが消費性の高い人たちにお金を与えるという事は直接経済に刺激を与えられると僕も思います。
日本の低成長の理由として以下2つも書かれていました。
①企業が儲かっても人的資本投資や無形資産投資をせずにお金を貯め込んできたこと
②コストカットのために非正規社員を増やしたこと
投資への出し惜しみと人件費の節約ですね。
これはコスパ好きとしてもダメだと分かります。
投資をしないと成長できないですし、非正規社員にも優秀な人はたくさんいるからです。
優秀な人が生まれないのも納得のいく理由です。
感覚を掴むための例
本書には日本がどれだけ安いかをわかりやすくするための例が載っていました。👇
2000年から2020年の20年間で日本の物価はほとんど変わっていなくて、平均インフレ率はゼロになっている。アメリカの物価は20年間ほぼ毎年2%ずつ上昇してきました。2020年の物価水準は00年の物価水準の5割増しになりました。
ここで、日本人が20年ぶりにアメリカに行くと「物価が5割高くなっている」ということを感じ、アメリカ人には日本は相当安く感じるということです。
日本安いっすね!
日本企業の特徴
①「オンリーワン」ではなく「安さ」
本書には日本企業に根付いた文化について言及されているところがありました。
他の誰もがやらないことをに特化して「オンリーワン」で勝負するが欧米企業だが、日本企業は品質や性能、領域のユニークさで競う事ができず、安さで勝負をする傾向がある
日本はユニークを嫌う印象があるよね。というか同調しようとすることに美徳があると思っている人が多いという表現が正しいのかもしれないが、出る杭を打つのは日本人の得意技。無能な奴ほど嫉妬深く、嫉妬深い奴ほどしつこく出る杭を打とうとするからタチが悪いよね。
②「安定」ではなく「固定」
安定について言及するところがありました。
日本人は安定を好むと言われているが、実状は「安定」ではなく「固定」。
安定は上がったり下がったりしながら水準は同じ程度になるというもの。
しかし、日本人は何が起きても同じ場所に縛り付けておく節がある。
日本企業は固定を前提にコストを設定するので売上確保を重要視し、売るために値下げを行う。
値段を固定し、コストを減らすことで売上を得るマインドなわけですね。
やはり値段を高くするという事が大切なのですね。
安いということの罠
価格が安いという事は幸せな事だろうか。
僕はできれば安い方が幸せに感じる。
しかし、消費者の多くがこの考え方を持ってしまうと、例えば、チョコレートの新商品を開発する際、企業からするとせっかくおいしいチョコレートを作れそうないいアイデアが浮かんでも商品開発コストがかかるので商品化を諦めてしまう。
理想は企業が競って積極的に良い商品を作り、価格に見合うよう価格も上げて大成功を収めるという構図。だけど、今はステルス値上げのように「小容量化するか」の研究が重要視されているようです。
長期のデフレ均衡という「ぬるま湯」は日本にいる分にはある意味で心地良かったけど、世界どんどん成長し、購買力が衰えてグローバルな価格についていけない日本は海外旅行も難しくなってきているんですって。
コスパは安ければいいってものでもないので、ここは値上げしようとすることが必要ってのは僕自身も賛成です。
甘い見積もり(飲食産業)
読んでて「へー、なるほどー」と思ったのが飲食産業について。
飲食産業では、リッチ、味、価格という三大栄養素が重要(接客態度やスピードよりも重要)だけど、日本の製造者は「いいモノを作ったら高くても売れるだろう」と甘く見積もる。これにより強気の価格で供給し、アメリカなどで成功できず、海外撤退が相次ぐ状態になるのだとか。
「へー、なるほどー」と思いました。
海外マネーに踊らされ、海外に飲まれる安いニッポン
安いニッポンが直面している懸念点の中でも特に個人的に印象に残ったものを以下に載せておきます。
①地方が高くなる
海外マネーが流入した地域は価格が高くなっている。
例えばニセコ。
ラーメンが2,000円とか。
でもまだ海外よりは安いから海外からの旅行客が来てお金を置いていく。
海外マネーの流入。
でも地元民にとっては食べ物や物件などが高くなり住むのがつらくなる。
だから海外マネーに踊ることなく、地域がどう成長するかを考えるかがカギだと書いてあった。
②企業が買われる
安くなった日本の技術が買われる構図は経営難や後継者不足で廃業寸前の中小企業を海外企業が賠償するというもの。
③クリエーターも買われる
日本のクリエーターも海外に買われる。
ネットフリックスの制作費は日本の3倍の予算がつくケースもあると言われていたり。。
まあ日本のアニメーターの人は本当に賃金が少ないって聞くから海外に雇ってもらった方が全然いいよね!
海外も安く高品質なアニメを制作できるならwin-winだね!
④優秀は人は日本から出ていく
海外企業に比べて高い賃金のポジションが無くなると、英語ができて能力が高い日本人は、より高い所得を求めて海外企業に流れていく。
ただでさえ出る杭は打たれがちな社会だし、その上賃金は安いなら海外に出ていくのは当然と考えられるよね!