はじめに
前回、月の重力による潮汐力を求めてみました。
しかし、太陽による重力もあるため、潮の満ち引きを考えるにはこの潮汐力も考慮する必要があります。
今回は、この太陽の重力も考慮した潮汐力を求めてみます。
そして、時間でその潮汐力の変化も求めてみます。
最後に実際の値と比較して見ます。
太陽と月を考慮した潮汐力
月の重力ポテンシャルは以下で表されます。(この式は前回も出てきました)
$$ \frac{1}{a} + \frac{x}{a^2} + \frac{3x^2-2r^2}{2a^3}$$
ここでは、地球の中心を原点として考えます。
そして、各値を以下のように定義します。
- 地球の地表のある点の位置ベクトル:$ \mathbf{r} $、
- 外部天体bの地球中心からの位置ベクトル:$ \mathbf{a_b} $
- この位置ベクトルの大きさは$ |\mathbf{a_b}| $で、単位ベクトル$ \mathbf{\hat{n_b}}=\frac{\mathbf{a_b}}{|\mathbf{a_b}|} $となる
- 天体の質量:$m_b$
このとき、個々の天体による潮汐ポテンシャルは以下で表せます。
$$ U_b(r)=-\frac{Gm_b}{2|\mathbf{a_b}|^3}(3(\mathbf{r}\mathbf{\hat{n_b}})^2-r^2) $$
つまり、全ての天体による潮汐ポテンシャルは以下となります。
$$ \sum_{b} U_b(r) $$
📜📜📜
さて、ここで地球に目を向けてみます。
地球自身のポテンシャルは以下となります。
$$ V_{self}(R+ \zeta )=- \frac{GM}{R+ \zeta} $$
$R$に比べて$ \zeta $は十分に小さいので、
分母の逆算展開より、
$$ \frac{1}{R+ \zeta}\approx\frac{1}{R}-\frac{\zeta}{R^2} $$
なので、
地球自身のポテンシャルは
$$ – \frac{GM}{R+ \zeta} = – \frac{GM}{R}+\frac{GM\zeta}{R^2} $$
$\zeta$だけ上がった表面での総ポテンシャルは以下のように表せます。
$$ V_{total} = – \frac{GM}{R}+\frac{GM\zeta}{R^2}+ U(R) $$
総ポテンシャルは常に一定なので、
$$ 一定 = – \frac{GM}{R}+\frac{GM\zeta}{R^2}+ U(R) $$
であり、$- \frac{GM}{R}$は定数なので、左辺に吸収できます。このため、
$$ 一定 = \frac{GM\zeta}{R^2}+ U(R) $$
となります。
また、$\frac{GM}{R^2}=g$なので、
$$ 一定 = g\zeta+ U(R) $$
となります。
「海面は高低があっても水面が同じ重力ポテンシャルを持つように決まる」という条件を表し、重力ポテンシャルの基準をどこに置くかは自由なので、0とすると、$ 0 = g\zeta+ U(R) $となり、
$$ \zeta = -\frac{U(R)}{g} $$
この重力ポテンシャル$U(R)$は各天体のポテンシャルとすると、$\sum_{b} U_b(r)$で表されるので、
$$ \zeta = \sum_{b} \frac{Gm_b}{2g|\mathbf{a_b}|^3}(3(\mathbf{r}\mathbf{\hat{n_b}})^2-r^2) $$
となります。
これで潮汐力による変位を求めることができました。
実は、プログラムに落とし込んで、実際の値とあっているかを確認しようとしましたが、思いのほかプログラムも長くなってしまったのと、書くのに疲れたので、今回はここまでとします。
最後に
潮汐力、ちゃんと計算しようとすると奥が深い。。。
でも太陽も考慮した(複数の天体の)場合の変位まで式を求めることができました。
