はじめに
皆さんはファストスローを読んだことはありますでしょうか?
ファストスローはとっても有名な本です。(雑)
上巻と下巻に分かれています。
今回は上巻について記載します。(こっち👇ね)
この本は認知について記載された本で、システム1とシステム2が出てきます。
システム1は瞬時に認知する機能を持っているファスト側、システム2は熟慮した認知をつかさどるスロー側になります。
多くの研究を基に分かった事実がこの書籍には書かれています。
今回は僕自身がこれは日常で使えそうだなって思ったところをまとめます。
システム1とシステム2について
システム1とシステム2とは
システム1
システム1は自動的に高速で機能し、わずかの努力(もしくは全く不要)の思考です。
システム1は印象や感覚を生み出す。
例としては以下のようなものが挙げられます。(本書から引用)
- 二つの物体のどちらが遠くにあるかを見て取る
- 突然聞こえた音の方角を感知する
- 声を聞いて敵意を感じとる
- 2+2の答を言う
- 簡単な文章を理解する
など。
システム2
システム2は頭を使わないとできないような知的活動に適切な注意を割り当てる思考です。
システム1で生み出された印象や感覚を材料とし、システム2は明確な意見や計画的な選択を形成します。
システム2の共通する特徴としては「注意力を要する」ということ。
例としては以下のようなものが挙げられます。(本書から引用)
- レースでスタートの合図に備える
- 人が大勢いるうるさい部屋の中で、特定の人物の声に耳を澄ます
- 白髪の女性を探す
- 歩く速度をいつもより速いペースに保つ
- あるページにaの文字が何回出てくるか数える
など。
「へー」って感じですが、この2つがあることで、日常の認知の歪み、バイアスが発生します。
個人的に特に日常に影響するなと思ったものだけまとめておきます。
個人的日常に影響しそうな認知バイアス
アンカリング
アンカリングとは、ある未知の数値を見積もる前に何らかの数値を示されると、その数値の近くにどどまったまま、離れにくくなる現象のことです。
例えば、住宅を買う際に、最初の提示価格に影響されてしまいます。
提示価格が低い時より高い時の方がその家が立派に見えるわけです。
アンカリング効果はお金に関する意思決定に大きく影響してきます。
環境汚染の寄付の実験があります。
仮に太平洋でタンカー原油流出事故が起きたとして、当面の処置として、太平洋沿岸の海鳥五万羽を救うためにいくら寄付をするかという実験です。
この時、「いくら寄付するか」という聞き方ではなく、
- 「5ドル以上寄付するつもりはありますか?」(アンカーが5ドル)
- 「400ドル以上寄付するつもりはありますか?」(アンカーが400ドル)
というアンカーのある質問をする。
その結果は以下のようになりました。
- アンカーが提示されない場合:平均して64ドル寄付すると答える
- アンカーが5ドルの場合:平均して20ドル寄付すると答える
- アンカーが400ドルの場合:平均して143ドル寄付すすと答える
🎈🎈🎈
また、ランダムな値をアンカーに設定してもその効果が表れます。
ドイツの裁判官たちの実験にて
- 裁判官たちに万引きで逮捕された人の調書を読んでもらう
- そして裁判官たちに2個のサイコロから1個を選んで振ってもらう
- サイコロにはおもりがついており、3か9しかでない
- サイコロの目が出た時点で刑期を長くするべきか短くするべきかを答えてもらう
結果はアンカーの力が出ました。
- 9が出たグループの平均刑期:8ヶ月
- 3が出たグループの平均刑期:5ヶ月
以上により、最初に設定されたアンカーは絶大な力を持っているため、注意が必要です。
アンカリングを実行するのは最終的にはシステム2です。
しかし、システム2は記憶から呼び出したデータに基づいて機能するため、データを呼び出そうとするのはシステム1が担う。
システム1が機能するということはアンカーは特定の情報を呼び出しやすくなり、その情報を基にシステム2はアンカーによるバイアスの影響を受けやすくなるわけです。
アンカーを意識して、注意を払っても、アンカリングが自分の思考に対してどう制限をかけるかは自分自身ではわからないのが怖い。
しかし、抗う術として、何らかの数字が提示されたらそれがどんな値でもアンカリングが働くということを肝に銘じておくことです。
そして、払う金額や、判断の重要性が高い場合はシステム2をしっかり機能させて考えることが大事です。
ハロー効果
ハロー効果とはある人や物の一つの良い(または悪い)特徴が、その全体的な印象に影響を与える認知バイアスのことです。
例えば、自分がとある大統領の政治を好ましく思っていたら、その大統領の容姿や声も好きになる傾向があるといったバイアスです。
これはマイナスにも働き、嫌いなところがあれば、容姿も嫌いになる傾向があります。
つまり、最初の方の印象の重みが増すことを意味します。
そこで得られた印象で好き嫌いが分かれるので、後の方の情報はほとんど無視されることもあります。
最初の印象ってとっても大事なんですね。
一方で、自分自身が相手に対して公平な評価ができない危険性もあります。
情報Aによって次に得た情報Bが影響されないようにするために、情報源は常にそれぞれが独立されておく必要があります。
判断の独立性は会議に応用できます。
議題について討論する前に出席者全員に前もって自分の簡単な意見を提出してもらいます。
これで会議において多様性を活かせます。
ちなみに余談ですが、「多様性の科学」という本で、会議について結構ディスっていたところがあったので、会議で多様性を活かすためにこの工夫は良い手かなと思います。
近年の研究に次ぐ研究によって明らかになっている通り、「会議は壊滅的に非効率」なのだ。
・・・【中略】・・・
「喫煙がガンを誘発する以上に、会議は惨憺たる結果を招いています」
「多様性の科学」より
まとめ
アンカリング、ハロー効果。
知っておくだけで、いろんなところに応用は効きそうですね。